夏はやはり水辺の活動が多くなります。
照りつける夏の太陽と生ぬるい空気で家から一歩も出たくない気分になっても、
水の中は別世界。
青梅の森が作り出す川の水は、清らかでひんやり。
そんな水辺でよく見つかるのが赤茶色のカニ、サワガニです。
サワガニは一生を淡水で過ごすカニ。
海ではなく川で暮らすカニは他にもいますが、
それらのカニたちも卵を産むときは海へ行くものが殆ど。
サワガニのように一生を川の上流で暮らすカニは世界的に見ても珍しいようです。
サワガニがもう一つ珍しいのは、卵の産み方。
一般的なカニは、お腹に抱えたたくさんの卵を水の中に撒き散らします。
その後、水を漂うプランクトンとしてしばらく生活してから、小さなカニの姿になります。
でも、サワガニは卵の中である程度成長し、小さなカニの姿で孵化します。
その間、母ガニが卵をお腹に抱えて育ちます。
生まれてからもしばらくはお母さんのお腹で守られ、
子ガニが自分で餌を取れるようになると、お腹から出て自分で生活します。
身近なところでは、ザリガニも卵から子供の時期を同じように過ごします。
海と違って狭い沢や池では、たくさん卵を産むより、
少なく産んで育てる方が良かったということなのでしょう。
カニとエビで種類は全然違うのに、同じ戦略になったところが面白いですね。
さて、普段のサワガニはどうしているでしょう。
私たちが探すとき、サワガニたちは沢の中の石や流木の下に隠れています。
実はサワガニたちは夜行性。日中は休んでいるのです。
暗くなると外に出てきて、藻や水草、虫などを食べます。
水から出てきて陸地を歩いていることもあり、落ちているミミズや動物の死体も食べます。
陸上でも活発なようで、木に登ることもあるそうです。
サワガニを探すときは隠れやすそうな平たい石や大きな流木の下を探してみましょう。
水の中でそっとそれらを持ち上げると、
最初は少し泥が巻き上がり濁って何も見えませんが、すぐに流れがきれいにしてくれます。
そうして透き通ってから、目を凝らしてみるときっとじっとしているカニがいるはず。
底の砂利ごと掬い上げてしまうか、上から軽く指で押さえて
お腹と背中を挟んでつまむようにすると捕まえやすいと思います。
大きいものはその持ち方だと挟まれて痛いので、体の左右をつまむように持ちます。
サワガニは、昔から唐揚げや佃煮にして食べられてきたので、
時々魚屋やスーパーで売られているサワガニを見ることがあります。
そうしたサワガニは、真っ赤や橙色、青白い色など
普段私たちが出会うサワガニと違う色をしていることがあります。
同じ地域でも別々の色が見られることがあり、色の変化の理由ははっきりと分かっていません。
ある中学生の研究では、長く飼育したものは青くなっていったので、
年齢で変わるのかもしれないと推測されていました。
とっても気になりますね。
さて、サワガニが登場する有名なお話があります。
それは、宮沢賢治の「やまなし」。
2匹のサワガニの兄弟が「クラムボン」について語っています。
その会話で出てくるのが、「クラムボンはかぷかぷわらったよ」という言葉。
かぷかぷ山のようちえんの由来となった場面です。
水に親しむかぷかぷっ子たちを見て、サワガニたちはまた笑っているかもしれませんね。
さかでぃ
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【さかでぃ:プロフィール】
自然や環境のメッセージを人に伝えるインタープリター。
幼少期は虫捕り少年。
大学で水産学や動物生態学を学ぶ中で
科学コミュニケーションに興味を持ち、環境教育の道へ。
現在は、一児の父としてかぷかぷに参加中。
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