春休み頃になると、日中は上着がいらないくらい暖かくなり、
谷戸の小川の冷たさも和らいできます。
かぷかぷっ子が大好きな水辺では、
そんな春の陽気を待ち侘びていた生き物が歌い、踊ります。
その生き物はアズマヒキガエル。
実はヒキガエルは、カエルでありながら普段は殆ど水に入ることはなく、
泳ぎもうまくありません。日陰であれば割と乾いた場所で見られることもあります。
お父さんお母さんは、子供の頃、
学校の校舎の裏や公園の花壇の中で出会ったことがありませんか?
日中は建物や物置の下の隙間、石や木の下の窪みなどに潜み、
夜や雨の日に出てきて虫などを食べています。
そんな風に乾燥しすぎない環境と適度な雨さえあれば平気なヒキガエルたちですが、
子供の時、すなわちオタマジャクシの時は水がないと生きていけません。
だから、繁殖期だけは大人のカエルたちがまとまった水場に集まります。
でも、泳ぎは下手なので流れのある川は苦手で、
池や沼のような水が動かない場所が好きです。
春の、温かくなってきたとはいえ人にはまだ冷たい池の水に、
どこからともなくやってくるアズマヒキガエルたち。
その繁殖行動がなかなか激しく、誰がつけたか「ガマ合戦」と評されます。
場所によっては数百のカエルが集まるのだとか。
時折、「クックックックッ」「グゥグゥグゥグゥ」と聞こえる池を覗いてみると、
水の中でくんずほぐれつ数匹のカエルが団子のようになっています。
カエルは視力が悪いこともあり、この時期のアズマヒキガエルのオスは、
魚や棒切れ、人の手など動くもの何でもメスだと思って抱きつきます。
もちろん、他のオスに抱きついてしまうこともあるわけですが、
そんな時抱きつかれたオスは、「クックックックッ」と鳴きます。
これは、「オレはオスだ、離せ!」の合図。
それを聞いた抱きついた方のカエルは腕を解いてまたメスを探します。
無事にメスに抱きつけたとしても、
またその上から別のオスが抱きついてくるなんてこともあり、てんやわんや。
そんな光景が池のあちこちで繰り広げられています。
合戦が終わり、静かになった池には新たな命。
長い紐状の卵の塊が産み落とされています。
一つ当たりの長さは5メートルを超え、中に入っている卵も数千個になるのだそう。
一週間ほどで、卵からオタマジャクシが出てきて、
さらに1〜2ヶ月かけて小さなカエルになります。
カエルの姿になると森へ散っていき、翌年成長して池に戻って来るのです。
今年は、4月初めの活動でこのガマ合戦が見られました。
次に行った時は、もうオタマジャクシが大きくなっているかな?
※ヒキガエルは目の後ろの盛り上がった部分から白い毒液を出すので、ここは触らないように注意
捕まえる時は両脇をはさんで持ちます。オスは人が持ってもクックックックッと鳴きます。
※いきものをさわったあとはかならず手をあらいましょう
さかでぃ
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【さかでぃ:プロフィール】
自然や環境のメッセージを人に伝えるインタープリター。
幼少期は虫捕り少年。
大学で水産学や動物生態学を学ぶ中で
科学コミュニケーションに興味を持ち、環境教育の道へ。
現在は、一児の父としてかぷかぷに参加中。
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